ホルムアルデヒドの試験方法はどのような内容ですか。
SV規格では壁紙のJIS規格と同様JIS−A6921(2003.30.20改正)に制定されているデシケーター法で行います。この方法はデシケーター内に蒸留水を入れ、その上に試験片を設置し、23±1℃の条件で24時間放置し、蒸留水に吸収されたホルムアルデヒド量を求める方法です。試験結果の単位は「mg/L」で表します。
壁紙に使用されているフタル酸エステルとは何ですか?
ビニル壁紙には、柔軟性を与えるために可塑剤として主にフタル酸エステル系の可塑剤が使用されています。DEHP(DOP)(ジ-2エチルヘキシルフタレート 沸点:386℃)、DINP(ジ−イソノニルフタレート 沸点:403℃)が多く使用されています。
壁紙からフタル酸エステルは揮発しますか、あるいは溶出しますか?
SV規格では沸点が300℃以上の難揮発性可塑剤を使用することとしています。これらの可塑剤の常温付近での放散量は問題視する量ではありません。
厚生労働省のDEHP(DOP)室内濃度指針値120μg/m3に対し、ほとんど検出されない程度しか揮発しないことが確認されています。
壁紙に使用されている可塑剤の安全性について (1) 可塑剤の発ガン性について (2) 可塑剤に内分泌かく乱作用(環境ホルモン)はあるのでしょうか? それぞれについて、教えてください。  
(1) IARC(国際がん研究機関)は2000年DEHP(DOP)にヒトへの発がん性はないとして従来の「2B」(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)を「3」(ヒトに対する発がん性について分類できない)に変更しました。
その後IARCは2011年2月の会議で再びDEHP(DOP)を「2B」に戻すと決定しましたが、その理由はヒトにおける新たな証拠が見つかったためではなく、げっ歯類における発がん性のメカニズムや疫学研究のために更なる調査研究が必要である、と判断したためで、DOPの発がん性には従来通りに種差があると考えらてれます。グループ「2B」には、コーヒーや酢漬け野菜、携帯電話等も分類されています。


(2) DEHP(DOP)を含む各種のフタル酸系可塑剤は、政府が行った試験により、内分泌かく乱作用の懸念は否定されています。
かつて、環境省が大がかりな調査を行った際、「環境ホルモン戦略計画SPEED’98:内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質」に多くの可塑剤がリストアップさたことから、可塑剤工業会では各種可塑剤について試験管レベル及び実際の動物を用いた試験を行い、女性ホルモン様作用を示さないことを確認しました。
その後2003年6月に環境省は9種類の可塑剤について、女性ホルモン様作用だけでなく、男性ホルモン様作用や甲状腺ホルモン様作用まで詳細に試験を行い、ヒトにも生態系にも内分泌かく乱作用が認められない(環境ホルモンではない)とする研究結果を発表しています。

壁紙から放散するVOCにはどの材料からどのようなものがありますか?
壁紙製品中への残留の可能性として、塩ビ加工品に用いられる希釈剤より、炭化水素(芳香族脂肪族)類。化粧印刷層に溶剤インキを使用している場合、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等。水性塗料、インキを使用している場合、乾燥遅延剤よりエチレングリコール等の多価アルコール類が考えられますが、高温加熱処理加工により製品への残留は極めて少ないものとなり、検出されない製品が大半を占めます。
VOCの安全性について説明してください。
VOC(揮発性有機化合物)室内濃度基準は、WHOがVOCの総濃度300mg/m3以下、芳香族TEX濃度50mg/m3以下としています。また、厚生省はトルエン260mg/m3以下、キシレン870mg/m3以下としています。
厚生労働省が発表した指針値の物質「ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロルベンゼン」は壁紙に使用されていますか。
ホルムアルデヒドの発生源として考えられる裏打ち紙は、使用する薬剤が改善されてSV規格を充分満足しています。また、現在紙の大部分は難燃紙ではなく普通紙を使用しています。トルエン、キシレン、エチルベンゼンについては2002年1月1日より使用禁止にしています。また、パラジクロルベンゼンは壁紙には使用していません。